ぜにがたへいじとりものひかえ 141 にまいのこばん
銭形平次捕物控 141 二枚の小判

冒頭文

一 「親分の前だが——」 ガラツ八の八五郎は、何やらニヤニヤとしてをります。 「前だか後ろだか知らないが、人の顏を見て、思ひ出し笑ひをするのは罪が深いぜ。何を一體思ひ詰めたんだ」 錢形の平次は相變らずこんな調子でした。年を取つても貧乏しても氣の若さと洒落氣(しやれつけ)には何んの變りもありません。 「ね、親分の前だが、褒美(はうび)を貰つたら何に費はうか、あつしはそれを考へて居るんで」「褒美?

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1943(昭和18)年2月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十七卷 權八の罪
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年10月10日