ぜにがたへいじとりものひかえ 024 へいじじょなん
銭形平次捕物控 024 平次女難

冒頭文

一 「八、良い月だなア」 「何かやりませうか、親分」 「止してくれ、手前(てめえ)が鹽辛聲(しほからごゑ)を張り上げると、お月樣が驚いて顏を隱す」 「おやツ、變な女が居ますぜ」 錢形の平次が、子分のガラツ八を伴れて兩國橋にかゝつたのは亥刻(よつ)(十時)過ぎ。薄寒いので、九月十三夜の月が中天に懸ると、橋の上に居た月見の客も大方歸つて、濱町河岸までは目を遮(さへぎ)る物もなく、唯も

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1933(昭和8)年12月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十二卷 鬼女
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年8月25日