ぜにがたへいじとりものひかえ 080 とりものじんぎ |
銭形平次捕物控 080 捕物仁義 |
冒頭文
一 江戸開府以來といはれた、捕物の名人錢形平次の手柄のうちには、こんな不思議な事件もあつたのです。——これは世に謂(い)ふ捕物ではないかも知れませんが、危險を孕(はら)むことに於ては、冷たい詭計(きけい)に終始した捕物などの比(ひ)ではないと言へるでせう。 「親分ツ」 飛込んで來たのは、ガラツ八の八五郎でした。 「何といふあわてやうだ。犬を蹴飛ばして、ドブ板を跳ね返して
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋社、1938(昭和13)年9月号
底本
- 錢形平次捕物全集第十卷 八五郎の恋
- 同光社磯部書房
- 1953(昭和28)年8月10日