ぜにがたへいじとりものひかえ 014 たぬきばやし
銭形平次捕物控 014 たぬき囃子

冒頭文

一 「親分、あつしは、氣になつてならねえことがあるんだが」 「何だい、八、先刻から見て居りや、すつかり考へ込んで火鉢へ雲脂(ふけ)をくべて居るやうだが、俺はその方が餘つ程氣になるぜ」 捕物の名人錢形の平次は、その子分で、少々クサビは足りないが、岡ツ引には勿體ないほど人のいゝ八五郎の話を、かうからかひ氣味に聞いてやつて居りました。 遲々(ちゝ)たる春の日、妙に生暖かさが睡りを

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1932(昭和7)年5月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十卷 八五郎の恋
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年8月10日