ぜにがたへいじとりものひかえ 051 まいごふだ
銭形平次捕物控 051 迷子札

冒頭文

一 「親分、お願ひがあるんだが」 ガラツ八の八五郎は言ひ憎さうに、長い顎(あご)を撫でて居ります。 「又お小遣ひだらう、お安い御用みたいだが、たんとはねえよ」 錢形の平次はさう言ひ乍ら、立ち上がりました。 「親分、冗談ぢやない。又お靜さんの着物なんか剥(は)いぢや殺生だ。——あわてちやいけねえ、今日は金が欲しくて來たんぢやありませんよ。金なら小判というものを、うんと持

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1936(昭和11)年5月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第十卷 八五郎の恋
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年8月10日