ぜにがたへいじとりものひかえ 027 まぼろしのたみごろう |
銭形平次捕物控 027 幻の民五郎 |
冒頭文
一 「親分、梅はお嫌ひかな」 「へえ?」 錢形平次も驚きました。相手は町内でも人に立てられる三好屋の隱居、十徳(とく)まがひの被布(ひふ)かなんか着て、雜俳(ざつぱい)に凝つて居ようといふ仁體(じんてい)ですが、話が不意だつたので、平次はツイ梅干を聯想(れんさう)せずには居られなかつたのです。 「梅の花ぢやよ、——巣鴨(すがも)のさる御屋敷の庭に、大層見事な梅の古木がある。この
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋社、1934(昭和9)年4月号
底本
- 錢形平次捕物全集第九卷 幻の民五郎
- 同光社磯部書房
- 1953(昭和28)年7月20日