ぜにがたへいじとりものひかえ 013 びじょをあらいだす
銭形平次捕物控 013 美女を洗ひ出す

冒頭文

一 芝三島町の學寮の角で、土地の遊び人疾風(はやて)の綱吉といふのが殺されました。櫻に早い三月の初め、死體は朝日に曝(さら)されて、道端の下水の中に轉げ込んで居たのを、町内の人達が見付けて大騷ぎになつたのでした。 傷といふのは、伊達(だて)の素袷の背後から、牛の角突きに一箇所だけ、左の肩胛骨(かひがらぼね)の下のあたり、狙つたやうに心臟へかけてやられたのですから、大の男でも一た

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1932(昭和7)年4月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第九卷 幻の民五郎
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年7月20日