ぜにがたへいじとりものひかえ 062 しろのえずめん
銭形平次捕物控 062 城の絵図面

冒頭文

一 「親分、大變な野郎が來ましたぜ」 ガラツ八の八五郎は、拇指(おやゆび)で自分の肩越しに指し乍ら、入口の方へ頤(あご)をしやくつて見せます。 「大變な野郎——?」 錢形の平次は、岡つ引には過ぎた物の本に吸付いて、顏を擧げようともしません。 「二本差(りやんこ)が二人——」 「馬鹿野郎、御武家を野郎呼ばはりする奴があるものか、無禮討にされても俺の知つたことぢやないぜ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1937(昭和12)年4月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第九卷 幻の民五郎
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年7月20日