ぜにがたへいじとりものひかえ 025 ひょうろうがんひぶん
銭形平次捕物控 025 兵粮丸秘聞

冒頭文

一 錢形平次もこんな突拍子もない事件に出つくはしたことはありません。相手は十萬石の大名、一つ間違ふと天下の騷ぎにならうも知れない形勢だつたのです。 江戸の街はまだ屠蘇(とそ)機嫌で、妙にソハソハした正月の四日、平次は回禮も一段落になつた安らかな心持を、其陽溜(ひだま)りに持つて來て、ガラツ八の八五郎を相手に無駄話をして居ると、お靜に取り次がせて、若い男の追つ立てられるやうな上ず

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1934(昭和9)年2月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第九卷 幻の民五郎
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年7月20日