ぜにがたへいじとりものひかえ 003 だいとうざんげ
銭形平次捕物控 003 大盗懺悔

冒頭文

一 人間業(わざ)では盜めさうもない物を盜んで、遲くとも三日以内には、元の持主に返すといふ不思議な盜賊が、江戸中を疾風(しつぷう)の如く荒し廻りました。 「平次、御奉行朝倉石見守(あさくらいはみのかみ)樣から嚴(きつ)い御達しだ、——近頃府内を騷がす盜賊、盜んだ品を返せば罪はないやうなものではあるが、あまりと言へばお上の御威光を蔑(ないが)しろにする仕打だ。明日とも言はず、からめ取

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1931(昭和6)年6月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第九卷 幻の民五郎
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年7月20日