ぜにがたへいじとりものひかえ 047 どんどやき |
銭形平次捕物控 047 どんど焼 |
冒頭文
一 「あ、あ、あ、あ、あ」 ガラツ八の八五郎は咽喉佛(のどぼとけ)のみえるやうな大欠伸(おほあくび)をしました。 「何と言ふ色氣のない顏をするんだ。縁先で遊んで居た白犬(しろ)が逃出したぢやないか、手前(てめえ)に喰ひ付かれると思つたんだらう」 のんびりした春の陽ざしの中に、錢形平次も年始疲れの、少し奈良漬(ならづけ)臭くなつた足腰を伸ばして、寢そべつたまゝ煙草の烟(けむり
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋社、1936(昭和11)年1月号
底本
- 錢形平次捕物全集第九卷 幻の民五郎
- 同光社磯部書房
- 1953(昭和28)年7月20日