ぜにがたへいじとりものひかえ 078 じってのみち
銭形平次捕物控 078 十手の道

冒頭文

一 「親分、このお二人に訊いて下さい」 いけぞんざいなガラツ八の八五郎が、精一杯丁寧に案内して來たのは、武家風の女が二人。 「私は加世(かよ)と申します。肥前島原の高力左近太夫(かうりきさこんだいふ)樣御家中、志賀玄蕃(げんば)、同苗内匠(たくみ)の母でございます。これは次男内匠の嫁、關と申します」 六十近い品の良い老女が、身分柄も忘れて岡つ引風情の平次に丁寧な挨拶です。

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1938(昭和13)年7月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第九卷 幻の民五郎
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年7月20日