ぜにがたへいじとりものひかえ 056 じごくからきたおとこ
銭形平次捕物控 056 地獄から来た男

冒頭文

一 「親分、変な野郎が來ましたぜ」 ガラツ八の八五郎は、モモンガア見たいな顏をして見せました。秋の日の晝下がり、平次は若い癖に御用の隙の閑寂な半日を樂しんで居る折柄でした。 「変な野郎てえ物の言ひやうがあるかい。お客樣に違ひあるまい」 「さう言へばその通りですが、全く変ですぜ、親分」 「手前(めえ)よりも変か」 「へツ」 ガラツ八は見事に敗北しました。 「何んて

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1936(昭和11)年10月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第八卷 地獄から來た男
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年7月10日