ぜにがたへいじとりものひかえ 009 ひとはだじぞう
銭形平次捕物控 009 人肌地藏

冒頭文

一 かねやす迄を江戸のうちと言つた時代、巣鴨や大塚はそれから又一里も先の田舍で、田も畑も、武藏野の儘の木立も藪もあつた頃のことです。 庚申塚(かうしんづか)から少し手前、黒木長者の嚴(いか)めしい土塀の外に、五六本の雜木が繁つて、その中に、一基の地藏尊、鼻も耳も缺け乍ら、慈眼を垂れた、まことに目出度き相好(さうがう)の佛樣が祀られて居りました。 尤も、板橋街道の直ぐ傍

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1931(昭和6)年12月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第八卷 地獄から來た男
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年7月10日