ぜにがたへいじとりものひかえ 034 なぞのかぎあな
銭形平次捕物控 034 謎の鍵穴

冒頭文

一 「八、目黒の兼吉親分が來て居なさるさうだ。ちよいと挨拶をして來るから、これで勘定を拂つて置いてくれ」 錢形の平次は、子分の八五郎に紙入を預けて、其儘向うの離屋(はなれ)へ行つて了ひました。 目黒の栗飯屋(くりめしや)、時分時で、不動樣詣りの客が相當立て混んで居ります。 「姐さん、勘定だよ。何? 百二十文。酒が一本付いてゐるぜ、それも承知か。廉(やす)いや、これや」

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1934(昭和9)年11月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第八卷 地獄から來た男
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年7月10日