ぜにがたへいじとりものひかえ 057 しのやぶみ
銭形平次捕物控 057 死の矢文

冒頭文

一 相模(さがみ)屋の若旦那新助は二十一、古い形容ですが、日本橋業平(なりひら)といはれる好い男の癖に、去年あたりからすつかり、大弓に凝(こ)つてしまつて、大久保の寮に泊り込みのまゝ、庭の垜(あづち)で一日暮すことの方が多くなりました。 主人の喜兵衞はそればかり心配して、親類や知己に頼んで、縁談の雨を降らせましたが、新助はそれに耳を傾(かたむ)けようともしません。 大

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1936(昭和11)年11月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第八卷 地獄から來た男
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年7月10日