ぜにがたへいじとりものひかえ 011 なんばんひほうせん |
銭形平次捕物控 011 南蛮秘法箋 |
冒頭文
一 小石川水道端に、質屋渡世で二萬兩の大身代を築(きづ)き上げた田代屋又左衞門、年は取つて居るが、昔は二本差だつたさうで恐ろしいきかん氣。 「やい〳〵こんな湯へ入られると思ふか。風邪を引くぢやないか、馬鹿々々しい」 風呂場から町内中響き渡るやうに怒鳴(どな)つて居ります。 「ハイ、唯今、直ぐ參ります」 女中も庭男も居なかつたと見えて、奧から飛出したのは伜の嫁のお冬
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋社、1932(昭和7)年2月号
底本
- 錢形平次捕物全集第八卷 地獄から來た男
- 同光社磯部書房
- 1953(昭和28)年7月10日