ぜにがたへいじとりものひかえ 038 いちまいのぶんせん
銭形平次捕物控 038 一枚の文銭

冒頭文

一 「親分、退屈だね」「——」「目の覺めるやうな威勢のいゝ仕事は無えものかなア。此節のやうに、掻つ拂ひや小泥棒ばかり追つ掛け廻して居た日にや腕が鈍(なま)つて仕樣がねえ」 ガラツ八の八五郎は、そんな事を言ひ乍ら、例の癖で自分の鼻ばかり氣にして居りました。 「大層な事を言ふぜ、八。先刻から見て居ると、指を順々に鼻の穴へ突つ込んで居るやうだが、拇指(おやゆび)の番になつたら何うするだらうと、俺はハラ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1935(昭和10)年3月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第六卷 兵庫の眼玉
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年6月10日