ぜにがたへいじとりものひかえ 068 つじぎりきだん
銭形平次捕物控 068 辻斬綺談

冒頭文

一 「親分、あつしはもう癪(しやく)にさはつて癪にさはつて」 ガラツ八の八五郎は、いきなり錢形平次の前に、長んがい顎を漂よはせます。 よく晴れた秋の日の朝、平次は所在なく雁首(がんくび)を爪繰り乍らあまり上等でない五匁玉の煙草包をほぐして居るのでした。 「何をブリ〳〵してゐるんだ。腹の立て榮えのする面ぢやないぜ、手前なんか」 一服吸ひ付けて、平次は暫らく薄紫色の煙をなつかしむ風情です。 「

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋社、1937(昭和12)年10月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第五卷 蝉丸の香爐
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年6月20日再版