ぜにがたへいじとりものひかえ 296 たびにやむおんな |
| 銭形平次捕物控 296 旅に病む女 |
冒頭文
一 浪人大澤彦四郎は、まことに評判の良い人でした。金があつて情け深くて、人柄が穩(おだや)かで、これが昔、人斬庖丁を二本、腰にブラ提げて、肩で風を切つた人とは、どうしても受取れないほどの物柔(ものやはら)かな中老人だつたのです。 中老人と言つても、五十になるやならずで、男前も立派、武藝のほどは知りませんが、金も相當以上に持つてゐるらしく、分(ぶん)に過ぎた慈悲善根(じひぜんこん)を施(ほど)
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋新社、1953(昭和28)年2月号
底本
- 錢形平次捕物全集第五卷 蝉丸の香爐
- 同光社磯部書房
- 1953(昭和28)年5月25日