ぜにがたへいじとりものひかえ 278 とまさんしちのむすめ
銭形平次捕物控 278 苫三七の娘

冒頭文

一 「へツへツ、親分、今晩は」 ガラツ八の八五郎、箍(たが)のはじけた桶のやうに手のつけやうの無い笑ひを湛(たゝ)へ乍ら、明神下の平次の家の格子を顎で——平次に言はせると——開けて入るのでした。それは兩の手で彌造を拵へて、格子をまともに開けられる筈はないからだといふのです。 五月のある日、爽やかな宵、八が來さうな晩でしたが、お仕着(しき)せの晩酌を絞つて、これから飯にしようといふ頃になつて、漸

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1952(昭和27)年7月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第四卷 からくり屋敷
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年5月10日