ぜにがたへいじとりものひかえ 279 じさんせんりょう |
| 銭形平次捕物控 279 持参千両 |
冒頭文
一 「親分の前(まへ)だが、あつしも今度ばかりは、二本差が羨ましくなりましたよ」 ガラツ八の八五郎は、感にたへた聲を出すのでした。カラリと晴れた盆過ぎの或る日、平次は盛りを過ぎた朝顏の鉢の世話を燒き乍ら、それを手傳はうともせずに、縁側から無駄を言ふ、八五郎の相手をして居ります。 「おや、妙なことを言ふぢやないか、お前は武家と田螺和(たにしあへ)は大の嫌ひぢやなかつたのか」 さう言ふ平次は、朝顏の
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オール讀物」文藝春秋新社、1952(昭和27)年8月号
底本
- 錢形平次捕物全集第四卷 からくり屋敷
- 同光社磯部書房
- 1953(昭和28)年5月10日