ぜにがたへいじとりものひかえ 280 おいらんくずれ
銭形平次捕物控 280 華魁崩れ

冒頭文

一 「羨(うらや)ましい野郎があるもんですね、親分」 夏の夜の縁先、危い縁臺を持ち出して、蚊(か)を叩き乍ら、八五郎は斯んなことを言ふのです。 「お前でも人を羨ましがることがあるのか、淺ましくなりやがつたな」 錢形平次は呑氣な心持ちで相手になつて居ります。八五郎が急に慾が出て、角(かど)の地面が欲しくなる氣遣ひは無いと、多寡をくゝつてゐる樣子です。 「相手は駒形の伊三郎の野郎ですがね」「取り拔

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1952(昭和27)年9月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第四卷 からくり屋敷
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年5月10日