ぜにがたへいじとりものひかえ 282 みっしつ
銭形平次捕物控 282 密室

冒頭文

一 「妙なことを頼まれましたよ、親分」 ガラツ八の八五郎、明神下の平次の家へ、手で格子戸を開けて——これは滅多にないことで、大概(たいがい)は足で開けるのですが——ニヤリニヤリと入つて來ました。 十月の素袷(すあはせ)、平手で水つ洟(ぱな)を撫で上げ乍ら、突つかけ草履、前鼻緒がゆるんで、左の親指が少し蝮(まむし)にはなつて居るものゝ、十手を後ろ腰に、刷毛先(はけさき)が乾(いぬゐ)の方を向いて

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1952(昭和27)年11月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第四卷 からくり屋敷
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年5月10日