ぜにがたへいじとりものひかえ 277 おらんだのぎんか
銭形平次捕物控 277 和蘭の銀貨

冒頭文

一 「親分、良い陽氣ですね」 フラリとやつて來た八五郎は、襟(えり)の汗を拭いて、お先煙草を五六服、お茶をガブ呑みの、繼穗(つぎほ)もないお世辭を言ふのでした。 「二三日見えなかつたが、何處へ行つて居たんだ」 錢形の平次も、この十日ばかりはまるつきり暇、植木の世話をしたり、物の本を讀み返したり蟻(あり)の行列を眺めたり、雲のたゝずまひを考へたり、まことに退屈な日を送つて居たのです。 「こんな時

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1952(昭和27)年6月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第三卷 五月人形
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年4月20日