ぜにがたへいじとりものひかえ 272 とぶわかしゅう
銭形平次捕物控 272 飛ぶ若衆

冒頭文

一 「姐(ねえ)さん、谷中にお化けが出るんだが、こいつは初耳でせう」 松が取れたばかり、世界はまだ屠蘇(とそ)臭いのに、空つ風に吹き寄せられたやうな恰好で、八五郎は庭木戸へ顎(あご)を載せるのでした。 「ま、八さん、お早やうございます」 お靜はそれでも、襷(たすき)を外して、縁側の上から、尋常に挨拶するのでした。朝の仕事が濟んで掃除して居るところ、淡い陽射しが足もとを這ひ上つて寒々とした風情の中

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1952(昭和27)年1月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第三卷 五月人形
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年4月20日