ぜにがたへいじとりものひかえ 276 つりばりのこい
銭形平次捕物控 276 釣針の鯉

冒頭文

一 「お早やうございます」 花は散つたが、まだ申分なく春らしい薄靄(うすもや)のかゝつた或朝、ガラツ八の八五郎は、これも存分に機嫌の良い顏を、明神下の平次の家へ持込んで來ました。 「大層寢起きが良いな、八。挨拶だつて尋常だし、月代(さかやき)だつて、當つたばかりぢやないか、何(ど)つかに結構な婿の口でもあつたのかえ」 平次は煎餅(せんべい)になつた座布團を滑らしてやつて、ぬるい茶を注いでやつたり

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1952(昭和27)年5月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第三卷 五月人形
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年4月20日