ぜにがたへいじとりものひかえ 251 やりとほのお
銭形平次捕物控 251 槍と焔

冒頭文

一 「親分、良い陽氣ですね」 ガラツ八の八五郎が、鼻の頭から襟へかけての汗を、肩に掛けた手拭の端つこで拭きながら、枝折戸(しをりど)を足で開けて、ノツソリと日南(ひなた)に立ちはだかるのでした。 「陽氣の良いのはオレのせゐぢやないよ、頼むから少し退いてくれ。草花の芽が一パイに天道(てんたう)樣に温ためられてゐるんだ」 平次は縁側に並べた小鉢の前から、忌々(いま〳〵)しく八五郎を追ひやるのです。

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1951(昭和26)年4月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第一卷 恋をせぬ女
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年3月25日