ぜにがたへいじとりものひかえ 253 ねこのくびわ
銭形平次捕物控 253 猫の首環

冒頭文

一 「人の心といふものは恐ろしいものですね、親分」 八五郎が顎を撫で乍ら、いきなりそんな事を言ふのです。 「あれ、大層物を考へるんだね。菓子屋の前を通ると、店先の大福餅をつかみ喰ひしたくなつたり、酒屋の前を通る度に、鼻をヒク〳〵させるのも、人間の心の恐ろしさだといふわけだらう」「止して下さいよ、親分、あつしのことぢやありませんよ」 平次の鼻の先で、八五郎は無性(むしやう)にでつかい手を振りました

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1951(昭和26)年6月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第一卷 恋をせぬ女
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年3月25日