ぜにがたへいじとりものひかえ 256 こいをせぬおんな
銭形平次捕物控 256 恋をせぬ女

冒頭文

一 「親分、あつしはもう口惜(くや)しくて口惜しくて」 八五郎はいきなり怒鳴り込むのです。彼岸過ぎのよく晴れた朝、秋草の鉢の世話に、餘念も無い平次は、 「騷々しいな、何が一體口惜しいんだ。好物の羊羹(やうかん)でも喰ひ損ねたのか」 一向氣の無い顏を擧げるのでした。 「そんな氣樂な話ぢやありませんよ。親分も知つて居なさるでせう、菊坂小町と言はれた小森屋の娘お通が、昨夜殺されましたぜ」「フーム」「

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1951(昭和26)年9月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第一卷 恋をせぬ女
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年3月25日