ぜにがたへいじとりものひかえ 255 つきまち
銭形平次捕物控 255 月待ち

冒頭文

一 「あつしはつく〴〵世の中がイヤになりましたよ、親分」 八五郎は柄にもなく、こんなことを言ひ出すのです。 「あれ、大層感じちやつたね、出家遁世(とんせい)でもする氣になると、二三人泣く娘があるぜ」 平次は縁側に腰を掛けたまゝ、明日咲く鉢の朝顏の蕾(つぼみ)などを勘定して居りました。まことに天下泰平の姿で、八五郎の厭世論などには乘つてくれさうもありません。 「何時の世になつたら、惡い事をする奴

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「オール讀物」文藝春秋新社、1951(昭和26)年8月号

底本

  • 錢形平次捕物全集第一卷 恋をせぬ女
  • 同光社磯部書房
  • 1953(昭和28)年3月25日