ますのはなし
鱒の話

冒頭文

濃緑のあかだもの木の下にて三十を越えた四十あまりの人の話をきく二十余年北国の地に流浪して絶えず山水に親しみながら生活を続けて来た人の話である面は陽に赫(や)けているひげはおとなしくあご一面にぼうぼうと生えているアイヌとも妥協して或は独木(まるき)舟に乗り激流をさか上(のぼ)った事もあると言う熊狩りに魚捕りに野に山に宿した事もあると言う長い半生にありし物語のさも面白そうな話ぶりちょうど今頃である雌と

文字遣い

新字新仮名

初出

「詩と人生」1923(大正12)年8月

底本

  • 今野大力作品集
  • 新日本出版社
  • 1995(平成7)年6月30日