めおとぜんざい
夫婦善哉

冒頭文

年中借金取が出はいりした。節季はむろんまるで毎日のことで、醤油屋(しょうゆや)、油屋、八百屋(やおや)、鰯屋(いわしや)、乾物屋(かんぶつや)、炭屋、米屋、家主その他、いずれも厳しい催促(さいそく)だった。路地の入り口で牛蒡(ごぼう)、蓮根(れんこん)、芋(いも)、三ツ葉、蒟蒻(こんにゃく)、紅生姜(べにしょうが)、鯣(するめ)、鰯など一銭天婦羅(てんぷら)を揚(あ)げて商っている種吉(たねきち)

文字遣い

新字新仮名

初出

「海風」1940(昭和15)年4月

底本

  • ちくま日本文学全集 織田作之助
  • 筑摩書房
  • 1993(平成5)年5月20日