じゃせいのしゅうねん
蛇性の執念

冒頭文

1 一つの事件の解決がつくと、S夫人はまるで人間が変ったように朗かになる。それが難しい事件であればあるほど、すんだあとは上機嫌だ。 「また何か変ったお話、聞かせて下さいましな」 そういう時を狙っては、彼女からいろいろ面白い話を聞いた。 S夫人はテーブルの上のチェリー・ブランデーの瓶をとって、美しいカット・グラスに注(つ)いで自分も呑み、私にもすすめながら云った。

文字遣い

新字新仮名

初出

「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月

底本

  • 大倉燁子探偵小説選
  • 論創社
  • 2011(平成23)年4月30日