はとつかい
鳩つかひ

冒頭文

悪魔の使者 「くそッ! また鳩だ。これで四度目か」 立松捜査課長は、苦り切った表情で受話機を切ると赤星刑事を顧みて、吐き出すようにそう言った。 平和の使者と言われる鳩が、悪魔の使となって、高価な宝石を持つ富豪の家庭を頻々と脅かしているのである。 この訴えを聞いてから早くも一カ月余りになるが、未だに犯人の目星さえつかず、あせりにあせっている矢先、またしても今の訴えだ。

文字遣い

新字新仮名

初出

「富士 九巻八号」1936(昭和11)年7月号

底本

  • 大倉燁子探偵小説選
  • 論創社
  • 2011(平成23)年4月30日