すばらしいきねんひん
素晴しい記念品

冒頭文

フランスの片田舎に一人の科学者があった、年はもう五十に近いが独身で、兄弟もなく、友達もなく、淋しい孤独生活であった。彼の唯一の趣味は絵を描くことである。最初は静物を、後には人物、ことに若い女ばかりを描くようになった、が、不思議なことに彼に雇われて行ったモデル女はそれぎり姿を消してしまい、紹介者のところに戻って来ないのだ。初めは気にも留めなかったモデル紹介者も、それが五人六人となると少し不審になって

文字遣い

新字新仮名

初出

「探偵文学 二巻四号」1936(昭和11)年4月号

底本

  • 大倉燁子探偵小説選
  • 論創社
  • 2011(平成23)年4月30日