ふくろうのめ
梟の眼

冒頭文

ポケットのダイヤ 陽子は珍らしく早起きして、朝のお化粧もすませ、ヴェランダの籐椅子にながながと両足を延ばし、ココアを飲みながら、頻りに腕時計を眺めていた。 客間の置時計が九時を打つと、それを合図のように玄関のベルが鳴って、貴金属商の杉村が来た、と書生が取りついだ。貴金属商というのは表面で、実は秘密に婦人達の間を廻り歩いている、損料貸しなのである。指輪や時計の交換などもやるので、

文字遣い

新字新仮名

初出

「キング 一三巻三号」1937(昭和12)年3月号

底本

  • 大倉燁子探偵小説選
  • 論創社
  • 2011(平成23)年4月30日