わせいつばきひめ
和製椿姫

冒頭文

1 私が玄関の格子を開けると、母が馳け出して来て、 「御殿山の東山さんからお使いが見えたよ、今朝っから、三度も」と急きこむように云った。 「どんな御用?」 「重大事件なんだって、至急、御相談したいから、日名子さんがお帰りになったら、直ぐお出で下さるようにって」 「事務所の方に電話くれればいいのに——東山さんなら事務所から直接行った方がずッと近いのにねえ」と、私は気が利かないじ

文字遣い

新字新仮名

初出

「仮面 三巻三号」1948(昭和23)年5月号

底本

  • 大倉燁子探偵小説選
  • 論創社
  • 2011(平成23)年4月30日