らんいくじろうしのしょじょさく ――「むき」をよみて――
蘭郁二郎氏の処女作 ――「夢鬼」を読みて――

冒頭文

「探偵文学」誌上で発表された時、非常な好評を博した蘭郁二郎氏の「夢鬼」がこの度上梓された。私は早速また繰返して読んだ。いくたび読んでも面白い。 妖魔の如き美少女葉子と、醜い憂鬱な少年黒吉との曲馬団の楽屋裏における生立から始まり、幼い二人はいつか互に愛しあうようになる。葉子にとっては戯れのようなこの恋も、黒吉にとっては実に命がけのものであったが、やがて移り気な彼女に捨てられる。恋に破れた彼は彼

文字遣い

新字新仮名

初出

「読売新聞」1936(昭和11)年12月9日

底本

  • 大倉燁子探偵小説選
  • 論創社
  • 2011(平成23)年4月30日