ゆかわはかせのじゅしょうをしゅくす
湯川博士の受賞を祝す

冒頭文

我邦では敗戰の創痍未だ癒えず、媾和條約未だ締結されず、國民は暗雲に鎖された氣持ちに包まれている際、湯川博士がノーベル賞を受けられた吉報に接したのは、黒雲の一隅から一條の日光が燦爛たる輝きを示した心地がして、專門家に限らず大衆に至るまで、歡聲をあげて喜びを同じくしました。しかしその喜びには、いろ〳〵の素因が伏在しています。單に世界で最も重きを置くノーベル賞が初めて本邦人に與えられたのを喜ぶ人もあり、

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「技術聯盟講演」1949(昭和24)年12月17日

底本

  • 長岡半太郎隨筆集 原子力時代の曙
  • 朝日新聞社
  • 1951(昭和26)年6月20日