しん・へいけものがたり 01 “はしがき”にかえて
新・平家物語 01 “はしがき”に代えて

冒頭文

祇園精舎(ぎをんしやうじや)の鐘の声、諸行(しよぎやう)無常の響あり。娑羅(しやら)双樹の花の色、盛者(じやうしや)必衰の理(ことわり)をあらはす。奢(おご)れる人も久しからず。たゞ春の夜の夢のごとし。猛き者も遂には亡びぬ。偏(ひとへ)に風の前の塵(ちり)におなじ。 遠く異朝をとぶらへば、秦(しん)の趙高(てうかう)、漢の王莽(わうまう)、梁(りやう)の朱异(しゆい)、唐の禄山、これらはみな旧

文字遣い

新字旧仮名

初出

「週刊朝日」1950(昭和25)年4月号

底本

  • 吉川英治全集・33 新・平家物語(一)
  • 講談社
  • 1967(昭和42)年8月20日