しん・へいけものがたり 02 ちげぐさのまき
新・平家物語 02 ちげぐさの巻

冒頭文

貧乏草 『平太(へいた)よ。また塩小路(しおこうじ)などを、うろうろと、道草くうて、帰るではないぞ』 使の出がけに、清盛は、父忠盛から背へ喚(わめ)かれた。——その声に、たえず背を追われているようなかれの足つきだった。 何といっても、父は、こわい。おととし、保延(ほうえん)元年である。その父親について、かれは初めて、四国、九州へまで渡った。 在京の兵をひきい、内海の賊徒を平定に征(い)った

文字遣い

新字新仮名

初出

「週刊朝日」1950(昭和25)年4月号

底本

  • 吉川英治全集・33 新・平家物語(一)
  • 講談社
  • 1967(昭和42)年8月20日