『ふがくひゃっけい』じょ
『富嶽百景』序

冒頭文

所收——「富嶽百景」「女生徒」「滿願」「駈込み訴へ」「女の決鬪」「走れメロス」「彼は昔の彼ならず」「ロマネスク」 明治四十二年の初夏に、本州の北端で生れた氣の弱い男の子が、それでも、人の手本にならなければならぬと氣取つて、さうして躓いて、躓いて、けれども、生きて在る限りは、一すぢの誇を持つてゐようと馬鹿な苦勞をしてゐるその事を、いちいち書きしたためて殘して置かうといふのが、私の仕事の全部

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「富嶽百景」昭和名作選集28、新潮社、1943(昭和18)年1月10日

底本

  • 太宰治全集11
  • 筑摩書房
  • 1999(平成11)年3月25日