わたしのはは
私の母

冒頭文

そこにこうかつな野郎がいる そこにあいつの縄工場がある 縄工場で私の母は働いていた 私の母はその工場で 十三年 漆黒(くろう)い髪を真白にし 真赤な血潮を枯らしちまった 私の母はそれでも子供を生んだ 私達の兄弟は肉付が悪くって蒼白い 私達は神経質でよく喧嘩をした 私達は小心者でよく睦(むつ)み合った 私達の兄弟は痩せこけた母を中心に鬼ごっこをした 母は私達を決して追わない

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸戦線」1930(昭和5)年7月号

底本

  • 日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)
  • 新日本出版社
  • 1987(昭和62)年6月30日