とうやこのでんせつ
洞爺湖の伝説

冒頭文

虻田の村の酋長の妻が或る時突然病んで、どんなに加持祈祷しても験がなく、病は重くなるばかりだった。その頃豊浦の村に洞爺湖の主を憑神にもつ有名な巫女が居たのでそれに巫術をさせたら、やがて神がかりの状態になって次のように謡い出した—— サアエエ サアオオ俺の支配する湖のまん中に俺はぽっかり浮上がった寒いぞよ 寒いぞよ湖の上へ 湖の下へあたまの白波を従えて俺は泳いでいる寒いぞよ 寒いぞよ火を焚け 火を

文字遣い

新字新仮名

初出

「北海道風物誌」楡書房、1956(昭和31)年8月

底本

  • 和人は舟を食う
  • 北海道出版企画センター
  • 2000(平成12)年6月9日