かんなりマツとユーカラ
金成マツとユーカラ

冒頭文

叔母とは2年近く会ってなかった。なにしろ高齢なので老衰が著しく、私がテープレコーダーなどを持参してユーカラの採録に行っても、朗唱に重複が多くて資料になりがたい状態であった。彼女の脳裏に刻みこまれていたユーカラのすべてが記録は留められているわけではなく、今となっては永久に不可能ということになったわけだが、私は私なりに、学問上の損失は少ないと思っている。ぼう大な量のユーカラ伝承者としての金成マツは、そ

文字遣い

新字新仮名

初出

「北海タイムス」1961(昭和36)年4月8日朝刊

底本

  • 和人は舟を食う
  • 北海道出版企画センター
  • 2000(平成12)年6月9日