おばかんなりマツのこと
おば金成マツのこと

冒頭文

おば金成マツが老衰でなくなった。たまたま僕は数日前からがん固なしゃっくりで病床に伏しているのだが、朝から報道関係諸氏の来訪で身動きもできないありさまである。無形文化財とか、紫綬褒章とかいうものの偉力を身をもって体験させられた。これらのものが本人の生きている間に、せめてこの半分ぐらいでも偉力と功徳を発揮してくれたらもっといいのにと思った。 金成マツはユーカラの筆録者としては絶好の条件を備えていた

文字遣い

新字新仮名

初出

「北海道新聞」1961(昭和36)年4月9日朝刊

底本

  • 和人は舟を食う
  • 北海道出版企画センター
  • 2000(平成12)年6月9日