ふるえ
古江

冒頭文

一 一人の女が鍋を洗つて居る。其れは石崖の裾から半身を現はしたのである。其の鍋を洗つてゐる水の波紋が起る。無花果の樹が蔽ひかぶさるやうに延びてゐる。其の波紋が静まると思ふと、又別の波紋が遥か向うの別の無花果の樹の蔭から起る。 向うに立つて居る人が、 「こちらへ来て御覧なさい。」 とさしまねく。其方へ行つて見ると、其の向うの無花果の樹の蔭から波紋を起してゐるところがよく見える。其れは少女

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆33 水
  • 作品社
  • 1985(昭和60)年7月25日