ぞうきばやしのなか
雑木林の中

冒頭文

明治十七八年比(ごろ)のことであった。改進党の壮士藤原登(ふじわらのぼる)は芝(しば)の愛宕下(あたごした)の下宿から早稲田の奥に住んでいる党の領袖(りょうしゅう)の処へ金の無心(むしん)に往っていた。まだその比の早稲田は、雑木林(ぞうきばやし)があり、草原(くさはら)があり、竹藪(たけやぶ)があり、水田があり、畑地(はたち)があって、人煙(じんえん)の蕭条(しょうじょう)とした郊外であった。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本怪談大全 第一巻 女怪の館
  • 国書刊行会
  • 1995(平成7)年7月10日