かきぶね
牡蠣船

冒頭文

秀夫は凭(もた)れるともなしに新京橋の小さなとろとろする鉄の欄干(らんかん)に凭れて、周囲(まわり)の電燈の燈(ひ)の映(うつ)った水の上に眼をやった。重(おも)どろんだ水は電燈の燈を大事に抱えて動かなかった。それは秀夫にとっては淋しい眼に見える物が皆あざれたように思われる晩であった。橋の上には数多(たくさん)の人が往来(ゆきき)をしており、短い橋の左の橋詰(はしづめ)の活動写真館からは騒ぞうしい

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本怪談大全 第一巻 女怪の館
  • 国書刊行会
  • 1995(平成7)年7月10日